盗っ人の本気をみた/佐野バビ市

ぬすっとたけだけしい。

いつだったか上野広小路亭での落語会で自分的にタイムリーだったもんで愚痴らせてもらった。

自転車を勝手に撤去する連中。

小生がとめておいた自転車を勝手に持って行ったくせに、
「返してほしくば5000円持って来い!」
というその横暴スタイル。
盗品を5000円で持ち主に売り飛ばすスタイル。

盗っ人猛々しいとはこのことである。

小生の愛する二台の自転車のうち一台がその落語会当時やられた。

さらにひどい後日談。
『東京ミルクホールの快傑ハリマオ(再演)』製作時にハリマオの愛車が必要となり、
「それなら俺の愛車を盗っ人の保管場所から取り戻そう」
という話になった。
で、盗っ人の保管事務所に問い合わせてみた。

それが!

なんと!

驚くなかれ!

廃棄処分済み!!!!!

人の物を勝手に盗み、売りつけようとした挙句、回答なくば廃棄処分。
鬼だ。
人間じゃない。人の皮かぶった鬼である。
ヤクザがかわいく見えるってもんだ。

有識者から、

「そもそもお前が駐輪禁止のところに自転車置いておくのがいけないんだろ!」

とお叱りがあったならば…言い訳させて欲しい。

その場所は車も通れない細い道、だからといって駐輪が歩行者の邪魔には決してならない道幅。
しかも長さ30メートルほどの路地。その先は行き止まり。

「近所の人は迷惑してるんじゃないの?」

いや、そこに駐輪する自転車の所有者によってその周辺の飲食店、商店は確実に潤っている!

確かに、先日、とんかつ屋のおばさんが駐輪に対してブツブツ文句を言っていたが、このおばさんは接客の悪さがピカイチのおばさんで、小生の友人は「二度と行きたくない店」と豪語したほどだ。客に対しても酷い態度なんだから自転車に対して文句を言うのは当然である。

というわけで、盗っ人に息の根を止められた愛車に手を合わせ、残った一台で糊口をしのいでおりました。
ちなみに現在残る一台は第14回本公演『水晶の夜』で蘇我馬子が南部鉄子の母に体当たりした名車であります。

そんな名車であり、残された一台ですから、撤去されないように慎重に乗っていたわけです。

さて。盗っ人による撤去は抜き打ちで行われます。
そしてそのあとに残るのは「○月○日○時○分 撤去しました」の張り紙のみ。
まさに撤去人の通った後は草も残らない焼け野原。

二日前に張り紙が残されてました。
そして昨日も張り紙が。

二日連続の犯行。

おかしい…

これまでは半月に一度くらいのペースでした。

そして今朝。まさかの遅刻ギリギリで自転車を使いました。

まさか三日連続撤去は無いだろう。

三日連続で盗っ人に、都民・区民から巻き上げた税金を撤去報酬で渡すことはないだろう。そんな馬鹿なことがあってたまるか。
税金はもっと有意義に使われるべきだから。
そう考えました。

しかし嫌な予感はしました。

そう。とても嫌な予感が。


夕方。

小生の愛車の姿は、

そこにありませんでした。

盗っ人たちは本気だったのです。
本気でこの場所から自転車を一台残らず撤去してやろうと意気込んでいたのです。
恐ろしい…
奴らが本気であることに気付けなかった小生の一生の不覚です。

だからといって、勝手に撤去(もはや窃盗)した自転車に対し、頭を下げて「すみませんでした」と5000円払って引き取るのも業腹ですから。
仕方がありません。
自転車の無い生活と参りましょう。

あいつら…

大列車強盗ってのは聞いたことがあるけれど、大自転車強盗とはこのことだ。
悔しい。悔しすぎる。

今回の稽古場日記、非常に反社会的な内容となっています。
削除することになるかもしれません。
違法駐輪を取り締まる人たちを盗っ人呼ばわりしているのですから。

だからこそ!

削除される前に、声を大にして言っておきたい!




誰かいらない自転車があったらください!!!!!



今日の稽古場日記は写真が無い。
まさかこんなにも早くお別れが来るとは思わなかったから。
愛車の写真が無いのである。

合掌。